心詩 ー モウイチド、モドレルノナラ ー






「――――――――――は?」


今、何て言った?雅。

今……。


「俺んねーちゃんなんだよ」

「…………うっそ……」


あまりの衝撃的な事実に頭が上手く回らない。


あれ……?

雅にお姉ちゃんなんていたっけ…?

え…?


「混乱…してるよね」


彩花先輩もどう説明していいか、分かんないみたいだった。


「えっとね、ほんとの姉弟ではないんだ。んーっと…」

「血は繋がってねぇ。けど戸籍上姉弟だ」


先輩が言い惑ったところを、簡潔に雅が引き継ぐ。


「正直ね、私達自身も詳しいことは分かってないんだけど…」

「あいつから姉と弟だって言われただけだからな」


雅の顔が一瞬だけ、嫌悪に歪む。

雅の言う“あいつ”は雅を捨てたお母さんのこと。

余りにも傲慢で、我が儘で、気まぐれな雅の母親。

雅を産んだ理由も、捨てた理由も、名前を付けた理由さえでも、聞けば非人道的で人間性に欠ける。

その話を聞いたとき私は、この人が雅を約10ヶ月間もお腹に宿らせていたのは、奇跡以上のことだと思った。

あの人はしようと思ったら、きっと自分のお腹を刺してでも、赤ちゃんを殺せる。そんな人だから。