それから何日かして。
私と深紅は念願のを陸上部入りを果たした。
顧問は新任の女の先生で、少し心配だったけど、でも朝練だけは陸上専門のコーチが来てくれるから安心した。
キャプテンの鳴海彩花(ナルミ アヤカ)さんもめちゃくちゃ優しい人で陸上に勉強、なんでも出来る憧れの先輩だった。
――…そしてもうそろそろ部活にも慣れてきたころ。
私は部室に行ったはいいけど、忘れ物をして教室に戻る途中だった。
階段を3階にかかったところまで登ったとき、ふと足元にあった視線を上へ向けると、3階で2人、話をしている雅と彩花先輩の姿があった。
反射的に足を止め、上から見えないように身を隠す。
雅と彩花先輩……?
2人共知り合いだったの…?
「―――…渡した?」
「うん。びっくりしてたよ」
親しそうに2人は話をしている。
雅の声が……私と話すときみたいに楽しそう。
だんだんとその声に胸が締め付けられる。
……先輩と知り合いだったなら言えば良いのに。
なんで教えてくれなかったの?
それとも、教えられなかった?
雅に隠し事されたのが悲しくて、泣きそうになる私にもっと衝撃的な言葉が聞こえた。
「まさかあの雅がね」
「うっせ」
「誰のおかげかな?」
「彩花には関係ねーだろ」
…――呼び、捨て?
え…?そんな仲良かったの…?
イヤ、仲良かったってレベルじゃない。
雅は女子に関しては家族同然の人じゃないと呼び捨てにしない。
それも名字じゃなくて名前で。

