「だからうちも陸上入る」
笑顔でそう言う深紅に、私は反対なんて出来ない。
「じゃー…、一緒がんばるか」
深紅はいいライバルにもなりそうだし。
「それじゃあ入部届、出さないとね」
「あーそれさ、顧問の名前が分かんないんだよね」
「まじ?じゃあ担任に聞いとかないと」
さっそく机の中を探り入部届の紙を取り出し名前を書き始める深紅。
「あ、深紅さぁ専門何にすんの?」
「ハイジャン」
こっちも見ず即答。
「マジ?」
「うん。それと800」
「うわっ!…うちの一番苦手なやつ」
思いっきり顔を歪めると深紅は笑った。
「永遠は根性がないからね(笑)」
「だって長距離は走る意味わかんないしー」
「短距離だって意味分かんないじゃん」
「……それはまーそれだよ」
上手い言い訳が思いつかなくて適当に流す。
「長距離なんて疲れるだけじゃん?」
「でも陸上するんだったら短距離でも長距離走るでしょ」
「げ……」
サボろうかな…。
「ダメ」
「は?…え。うち口に出してた?」
「顔に出てた」
エスパーか…。
またそう思ったのもわかったのか深紅が笑い出す。
「わっかりやすっ!」
「…ほっとけ」
拗ねるように横を向くと、深紅はもっと笑い出した。
…このお調子者め。
まだ笑ってる深紅を睨む。
てか、マジで部活がんばろ。
―――絶対いい記録残す。
私は心の中で、密かに目標を立てたのだった。

