――タッタッタッタ――
階段を降りていく足音が遠くなる。
完全に音が聞こえなくなっても私はまだ動けずにいた。
「――――…な、に。今の」
小さな声とともに漏れる疑問は宙に漂うばかりで。
いくら考えたって身体が震えが増すばかりでなんの答えも出てこない。
―――…雅、は…?
考えているうちに無性に雅に会いたくなって、自分の身体を抱きしめながら階段をゆっくりと上った。
教室のドアを開けると真っ先に見えたのは机の上にある私と雅の指定カバン。
「………雅…?」
けれどそこに雅の姿はない。
あれ…?
そう思って教室に一歩踏み入れる、と同時にスカートの裾がくいっと引っ張られた。
視線を下に向けるとそこには体育座りをして俯く雅の姿が。
「どうし―――」
たの?、と言い終わる前に腕が私の首にぎゅっと巻きつき、雅が縋るように抱きついてくる。
雅…?
何も言わず俯くだけの雅を私もゆっくりと抱きしめる。
何があったとか、そんな事は聞かない。
ただ黙って雅が話すのを待つ。
「……永遠…」
雅の小さな吐息が耳にかかる。
「なに…?」
私が声を出すと、雅の柔らかい茶色の髪が揺れた。
「………どこも…いかないよな…?」
王子の雅が誰かになにかを尋ねるなんて、めったにしないのに。
「…何があっても…離れんな…」
苦しそうな雅。
私はなぜ、こんな苦しそうな雅が言った言葉を忘れちゃったんだろう。
“何があっても”
そう、何があっても。
いつだって雅は私を信じてくれてたはずなのに。
結局裏切ったのは私だったね。

