「…雅」
「んー」
「そろそろ離れた方がよくない?」
「なんで」
私は目の前の校舎を見つめる。
「めっちゃ見られる」
「だから?」
……………。
はぁ〜。
ため息をついて、閉めてある門に手をかける。
…あれ?
「あ、かない」
「は?」
後ろで突っ立ってた雅が驚いた顔をして、門を一緒に開けようと、私の横に並ぶ。が、
「鍵しまってね?」
「うそでしょ…―」
落胆した私の横で、雅は無言で2、3歩下がった。
え…まさか。
――スタンッ――
飛び越えちゃったよ…。
どんだけ自由人なのこいつ。
「永遠もはやくこいよ」
当たり前のように門を指差して、私に飛ぶことを促す雅。
こうさ、もうちょっと女の子だからとかそうゆう考えはないのかな…。
「永遠」
「はいはい分かったから」
そう言うやいなや、私も同じように後ずさりし、助走をつけて門を飛び越える。
――…まぁ、運動神経だけは自信あるから。
それから、大急ぎで…なんてことはなく、ゆっくりと教室に向かい案の定、担任にガミガミ言われた私達。
あーあ。なんかもう問題児扱いかも。
…私はこの時知らなかった。
朝、雅といたこと遅刻したことで、かなり目立ってたこと。
全学年に顔が知れ渡ってしまったこと。
厄介な女の先輩に、目を付けられてしまったことに。

