「みーやーびっ!お願いだからさっさと歩いてっ」
「んー…」
「学校初日から遅刻とかイヤなんだけどっ」
「…………」
「ちょっと雅!?」
も〜1日目は余裕もって登校しようと思ったのに!!
家出るときになって嫌な予感がして、雅んち覗いたら…。
―――案の定、ベッドで可愛い寝顔を晒してスヤスヤと惰眠を貪るバカが…。
それからのことは言うまでもなく。
叩き起こして、無理やり着替えさせ……―――今に至る。
「……もー雅って……」
こんだけ歩いてもまだ半分夢の中の雅。
今は私に手を引っ張られ、やっと歩いてる。
「〜〜とー…わ…」
「ん?」
まだ寝ぼけながら、雅がすり寄ってくる。
「どうし…」
私がそう言い終わる前に、雅は私の肩に頭を寄りかからせて眠ってしまった。
「雅…?」
「……ん…」
どんだけ寝てないのよ…。
「ちゃんと寝ないとダメだよ…?」
そう言って頭を撫でてあげると、雅が初めてまともにしゃべった。
「―――――――――夜、が」
溶けていきそうな声で、そう囁く。
「………………うん」
もういいよ、そう思って手をぎゅっと握る。
雅の心が、寂しさに潰されないように。
大丈夫。
その一言で私には分かるから。
「今日は、私んちおいで」
「……うん」
あの家に独りは、寂しすぎる。

