僕等の恋と嘘

「瑠璃…。」


足下で寝ころんでいる猫。

そう、この真っ白な毛並みに透き通るような瑠璃色の瞳をした捨て猫だった瑠璃を拾ってきたのもあたしと雅陽だった。
両親に頼み込んで、管理人さんと掛け合ってもらい許可をもらって飼い始めた瑠璃は、あたしの部屋と雅陽の部屋を仕切る壁にあいている―雅陽が昔蹴り破った―穴を通じて二つの家で暮らしている。


「瑠璃ー!!」


あまり変なことを叫べないマイルーム。
だって、隣の部屋、しかも穴あきの壁を挟んで隣にはすでにあたしの部屋から掻っ払っていったCDを聞いている雅陽がいる。

憂鬱だ…。

一度、両親に掛け合ったことがあったけどお父さんに

『お前以外に誰があの穴のあいた部屋を使うんだ。
雅陽くんもお前が隣の方が心おきなく騒げるだろう。』

と、理解しがたい理由で許可してもらえなかった。


「あーぁ。」


ん、ちょっと待てよ…?
あたしがそうであるようにきっと雅陽だってあたしを彼女になんて出来るわけがない。
そもそも好かれてないだろうし…。
だったらあれはジョークだ。
うん!そうだよ、何本気にしてるんだ、恥ずかしいヤツだなぁあたし。


中学に入ったときだ、雅陽に彼女が出来たと発覚したとき。
雅陽の両親は心底悲しがっていた。

『なんで、依緒ちゃんじゃないの…?』

と。


これも意味分からないんだけど、そのときに雅陽は言ったんだ。

『俺があんな色気のない女好きになると思うわけ?』

そのときにあいた穴が部屋の穴。
ちょうどあたしは自分の部屋にて会話を聞いてしまったんだけど…。

色気のない女、は自覚してるけどショックだったなぁ…。


あ、だから、あれは冗談!!