「まだ、木村さんがオフィスに…」 出口にいた警備員さんにそう伝え、社員通用口のドアを開ける。 「サヤカ…」 「へ…?どうして?」 そこには、冷たい手を擦り会わせたトシの姿があった。 「追っかけて来た…」 目を合わそうとしないトシが白い息を吐きながら呟いた。 「バカ…」 その一言があたしを大泣きさせた。 大粒の涙が拭いても拭いても溢れている。