「麗…! 蓮…!」


秋の泣き声と共に彼女の周りから不気味なアンティークドールが多数浮かび上がった。
それだけを見るとものすごく恐ろしい。
人形たちはナース服を着ていて救急箱を片手に双子に近付き始める。
恐ろしいながらも人形達は双子の怪我を少しずつ治療していった。

止血が済んだ頃、麗が重そうに瞼を開いた。
影があった空色の瞳に光が入り込み藍色に近かった色が元の色に戻りだした。
目だけを左右に動かし、辺りを見回したあと麗は未だに隣で眠っている双子の蓮に手を伸ばした。
麗の手が蓮の前髪を掬いとり絡めとるようにくるくると弄ぶ。
安堵の溜め息を漏らした麗に秋は水が入った硝子のコップを差し出した。
麗は起き上がりコップを受けとると蓮に向き合いながら乾いた喉を潤した。

水を飲み干したあと空になったコップを秋に渡した。
もう一度溜め息をついてから麗は蓮の頬を指のはらで優しくなぞった。
擽ったそうに眉を潜める蓮に麗はふわりと微笑んだ。


「手当 ありがとう」
「え あ 秋ちゃん」
「………麗の方が傷が深かった…」


秋は目の端をつり上げて怒った感じに麗を睨み付けた。
麗は少し考え事をするように目を伏せたが直ぐに明るい表情に戻り蓮の頭を撫でた。


「なんかねぇ 先公に襲われた」
「え 先生に?!」