仲が良さそうな友蘭を見送った和音達は蒼也の近くに向かった。
蒼也の隣には和音のよく知る人物が大口を開いて笑っていた。
それを見た瞬間和音はうげっ、と顔を歪ませる。
そんな和音達に気付いた蒼也は手を振ってきた。


「和音のチームは決まったの?」
「まぁ……蒼也さんは…コレと一緒?」
「和音! 兄に向かって"コレ"なんて!」


華囃 音(ハナバヤシ イン)。
それが和音の兄であり彼の名前だ。
彼はバイオリンニストである。
兄妹で音楽のIMITATIONを持つ珍しい例なのだ。
和音自身は音を嫌っているが音は和音のコトを気にかけすぎている。
所謂ロリコンという分類…種族だ。
その部分だけではなく彼は攻撃専門のIMITATIONなのだ。
防御、治癒専門の和音とは相入れない。
そのため和音は異常と言っていいほど音を嫌っているのだ。


「和音~!」
「近付かないでぇ!!」


和音は美華の背中に回り込んで音から離れた。
音はショックを受けた顔のまま上がっている手を下ろせずにいた。
そこだけ時間が止まっている音を見た和音はほっと胸を撫で下ろした。
美華に謝罪しようと口を開こうとしたとき、突然 両耳にふぅ…、と生暖かい息が吹きかけられた。