――楓サイド――
今の気持ちを行動に表すなら。
とりあえず、誰かに殴ってもらうだろう。
「ハア……」
…俺は、自分で言うのもなんだが、感情表現が乏しいと思う。
どうにもこうにも表に出すことがあまりない。
まあ…真裕には思いっきり見破られるようになったみたいだけど。
でもたぶん、色恋沙汰に鈍いあいつは気付いてない。
柄にもなく……嫉妬というものをしてしまったことに。
「きゅん?」
「…お前はいいな、楽で」
「?」
こいつ嫉妬されてるしな、真裕に。
「かっくんのばかあ! まおの梨音ちゃんなのにっ」…って怒られるし。
俺のせいじゃねぇ。
「ん? 楓くんじゃないかどうしたのかね」
「あーいえ…別に…」
梨音を抱いて広い廊下をうろうろしていたら、運の悪いことに真裕父に見つかった。
「お? その子はー……コロちゃんか!」
「梨音」
「……わざとだい」
「そうすか」
自信満々に見えたがな。
「で? なにしてるんだいこんなとこで。真裕は?」
「部屋に。俺はちょっと…………散歩?」

