乗り降りする人が多いのに、人が絶えるなんて…と、ふと上を見上げた。
『なに、着いたの?』
「あ、うん。空港にいるよ」
『あたし達今近くにいるの! 出てきたら会えるかもしれないわ』
「本当!」
パッと顔を輝かせたそのとき、人影が現れた。
…そうだよね。
いっぱいいるんだから当たり前…。
そう思いかけたけど、現れたのは一人。
しかもなんか…へんだよ。
帽子深くかぶって、コート着こんでる。
へんなの…。
そう思って少し避けようと、かっくんのほうに寄った。
かっくんもそんなあたしを引き寄せてくれる。
『…え? うん、そう。真緒よ。着いたって!』
「ん?」
電話の向こうではりんりんが喋ってる。
しゅっちゃんの声が聞こえるから、しゅっちゃんと喋ってるんだね。
「じゃありんり…」
「藤峰真裕…」
「……え?」
「…?」
電話の向こうのりんりんに話しかけようとしたとき。
目の前の男が、突然呟いた。
「藤峰真裕…! 思い知れ…!」
……え……!?

