ぷくっと頬を膨らませてシュンを睨むけど、ことごとくスルーされてしまう。
べっと舌を出してやった。
『カエデがいなくて寂しいだろう。いっぱい弾いていいからね』
『ケインはやらないの?』
『わたし!?』
『うん』
なにその驚き様。
想像もしてなかったみたいな。
しろよ。想像くらい。
『わ、わわわわたしはねマヒロ。おおお教える立場の人間であるからして…!』
『つまり弾けないのね』
『うんまあそういうこと…ってなに言いさらす!?』
そういうことなんだ。
弾けないのに教える立場? ふーん…。
レッスン室でやったのは、あたしが最初に来たときみんながやっていた曲だった。
よく知らないなこれ。誰の曲だろ?
気にはなったけど、特に知りたいとも思わずただ、聴いたままを音に乗せた。
やっぱりこうしてる時間はいいね。
すごく穏やかになれる。
それに…ほら、かっくんいないけど、落ち着いて演奏できるもん。
やっぱりあれって一種のスランプだったのかなー。
母様がいなくなって、あたしも不安だったのかもしれない。
だけど母様は見つかった。
悲しい結果だったけど、見つかった。
まだまだ思い出すと涙が出るけれど。
母様は、心の底からあたしの幸せを祈ってくれてた。
応えなきゃならないよ。
いっぱい、幸せになろう。
…そう、思ったのに。
どうして……あんなことになってしまったんだろう…?

