―――……
『カエデおっそい!!』
『なにやってたのよー…』
『早く早く』
引っ張られて席に腰を下ろすと同時に、開演を知らせるブザーが鳴った。
途端にぴたっと会場の声は収まる。
始まってからは…恐らくこの場の全員が、呼吸さえ忘れかけた。
背筋が逆立つような…頭に直接響くような…内側からかき乱されるような、真裕にしては珍しく激しさがある。
それをうまく抑え込むのが、真裕独特の柔らかさだ。
今にも折れそうに儚いのに、どこか包容力のようなものがあるのがあいつだ。
『……』
気が付いたらもう、開始から三十分以上が経っていて。
とても短くとても長い、真裕の復帰リサイタルはあっという間に終わっていた。
会場にはもう、なんの音もないというのに。
誰一人として口を開きもせず、ぴくりとも動かなかった。
―パチ…パチパチパチ…
しかし、やがてぽつぽつと拍手は沸き始め…ワッと場内は沸き立った。
これでもかというほどに歓声の嵐に包み込まれる場内。
真裕は弓と本体を持った両手を下に降ろし、正面を見据えていた。
『えー、えー、皆さん落ち着いて! お静かにお静かにッ。本日は特別に、皆さんが隠し持ってるそれらを…! 花束やその他諸々を、受け取っちゃいますよー! ……本人が❤』
『え!? 本当!?』
『素敵!!』
『俺一番乗りーっ』
『あたしよー!』
「……え、マジ…!?」
…え、マジ…?

