ドレスと格闘している真裕に近寄って、背中のチャックを上げながら言った。
「もう十分前だろうが。なんでまた…」
「だってね…。最初に着るはずだったドレスが大きかったの。ウエストだぼだぼ。この辺はぴったしだったんだけどねぇ…」
そう言って胸のあたりを撫でる真裕。
胸は合っててもウエストはでかかったのか…。
やっぱりこいつ、こう見えても結構スタイルはいいな。
『真裕様』
『仕上げにかかります』
『こちらにお座りくださいまし』
仕上げて…まだあんのか?
…そう言いかけて口をつぐんだ。
……よく見りゃ髪の毛ぼっさぼさじゃねぇかよ。
整えてもらっている間、扉の横の壁にもたれかかってじっと見つめながら待った。
しかしさすがに真裕のお抱えのヘアメイクだ。
ものの三分ほどで完璧に仕上がった。
『行ってらっしゃいませ真裕様』
『楽しみにしております』
『さあ、どうぞ』
バイオリンを手渡された瞬間、真裕の目付きが変わった。
世界中の誰もが待ち侘び。
誰もが愛し続けた、藤峰真裕の完全復活だった――。
「行ってきます」
「…ああ」

