秘密のMelo♪y④*ウィーン編㊦*


――楓サイド――


『……まだかしら』

『控え室出て数分でよくその台詞出たな』

『まだかしら』

『聞けよおい』

『まだかし…』


「うるせェなこいつら…」


『しみじみと…!?』


まあ、気持ちは分からんでもない。

会場中が同じように浮き足立ってるからな…。


『ちょっと今どこにいるの? …え!? まぁだそんなことしてんの! 早くしないと受付時間終わっちゃうわよッ』


…なんて、電話越しに連れに怒鳴ってるやつもいれば。


『時間間違えた…! や、やばかったぜ…』


…と胸を撫で下ろしているやつもいる。


『ねーママ、まだあ?』


待ち遠しそうな子供も…。


『このチケットがこの手にあるのは、そう、奇跡…!!』


…などと自分に酔ってるアホもいる。


無理もない。

今回真裕の適当さのせいでカメラ関係お断りなために、限られた数の人しか見ることはできない。

会場で見るしかないのだから、見られない者の落胆さはハンパないだろうな。

特に…あれら。

花梨とか修平。

花梨なんかは、箸折ってそう。


その姿が鮮明に頭に浮かび、思わず笑いそうになったけど。


『そろそろ席に行こうよ』


ハディの一言で、客席に足を向けた俺達だった。