「真裕様? どうかなされました?」
「えっ…」
ほけーっとしているあたしを不思議に思ったのか、帯をほどきながら坂本さんが聞いてきた。
お姉ちゃんみたいで…お母さんみたいな坂本さん。
なんかもう、ぽろっとなんでも言ってしまいそうになった。
「坂本さん…大好きだから、ずっといてね」
「は…。も、もちろんですわ! 生涯真裕様にお仕えさせていただきます❤」
一瞬。
ほんっとうにほんの一瞬だけぽかんとした表情をした坂本さんだったけど、そこはさすが。
すぐににっこり笑って答えてくれた。
『…から、…てみたいだろう?』
「ん?」
『だからそんなこと別にしたくありませんてば』
『そんな強がらなくたっていいじゃない』
『ハア…』
かっくんと父様の声?
扉の向こうからだ。
まぁた父様ってば、かっくんを困らせてるのね?
『だって! 男の夢じゃないか! 帯をほどいてくるくるくる~。“ああ~れぇ~~!”…ってやつ!』
「……」
「……」
『悪代官になりきるんだ! さあ!』
『だからそれはあなたの趣味で…』
「……早く脱いでしまいましょうね、お嬢様…」
「うん…。お願い」
わたしはなにもきいていない。…うん。聞いてない。

