あたしはあくまで会社を動かすほんの一部の一人だから、会社のためにならないことはすべて斬り捨てる。

偉そうだと言われようとなんだろうと、必要なことなのだから仕方ない。


あたしを呼び止めた谷川息子は、空気も読まず言った。


「最後に言わせてください真裕さん、好きです」


「あたしは嫌い」


それに対してあたしは、思いっきり素で返し、振り返ることなくその場を立ち去った。


「なんか…! 生理的に受け付けないのあの人…! 分かる、ねえ!? …っていねーし!!」


あれ!? あたし今かっくんに話しかけたのに、肝心の本人いないし!

どこ行った?


「かっくーん! かーっくーん? どこーねえ。ねえったらぁ…」


……いないよお…。

かっくん、どこ行っちゃったの?


だんだん不安になってきて、眉尻が下がってきたそのときだった。


「泣ーくなコラ」


「…!」


かっくん!


「どこ行ってたのっ」


「どこも行ってねぇよ。ちょっと話があっただけだ」


「話? 誰と…」


後ろから現れて、ぽんっと頭に手を乗せられた。

振り返って聞いてみると、「もう終わったからいい。帰るぞ」とはぐらかされてしまった。


…最近あたし、はぐらかされすぎじゃない?


なんとなーくそんな気になったけど、ぱらぱらと頭から追い払い、かっくんの腕に絡みついた。


「えへへー」

「お前可愛いな」

「ん?」

「いーや」