「お呼びでしょうかお嬢様?」
「あ、お兄ちゃん。なんか久しぶりー。この方がお帰りだから見送って差し上げて」
「かしこまりましてございます」
「ちょっとちょっとなに言ってるんだい真裕さん? 僕は今来たばかりで―」
あたしが今この世で一番嫌いな人。
なんたら肇。
誰だっけな? もう忘れたよ昔のことなんて。
「昨日のことだけど…まあいいか。下の名前だけでも覚えててくれて」
にこにこと嘘くさい笑顔で話しかけてくるのがなんかもうすでにうざかった。
お兄ちゃんなんて、野生の勘でなにか感じ取ってるのか、思いっきりにらんでいる。
「……」
…すうぅ…。
「きゃ~~~~~~!!」
「え"!?」
「へ!?」
「いやぁ~~~~~!!」
大きく息を吸っていきなり叫びだしたあたしを、なんたら肇もお兄ちゃんもぽかんとして見ていた。
「真裕?」
「かっくん!」
やったぁ! やっぱり来てくれたっ。
ダダダダダーッと走ってやってきたかっくんに、飛びつく勢いでしがみついた。
「お前…」
不思議そうな顔であたしを受け止めたかっくんだったけど、すぐになんたら肇の存在に気が付いた。
「ふん…。顔だけで真裕さんを誘惑しおったエセ旦那か」
「あ?」

