「悠…ごめん」
私は謝る事しか出来なかった。
気持ちに応えてあげる事が出来なかった。
だけど悠はそんな私に優しかった。
「凛とは喩え、“フリ”だとしても付き合えたし!俺はそれだけで十分だ!ありがとな!」
悠はそう言って私の髪をくしゃくしゃにして撫でた。
噛み締めるように、忘れないように、二度と触れる事の出来ない私の髪をくしゃくしゃに。
偽りの恋人という関係は終わった。
夏休みが始まる前に虚しく終わりを告げた。
それと共に悠の…恋も終わりを告げる事となった。
気持ちに応えられなくてごめんね。
もっと早く悠の気持ちに気付けなくてごめんね。
何度も謝るよ。
届かないだろうけど心の中で何度でも。
それが私が貴方に出来る罪滅ぼしだというのなら、何度でも謝るよ。
私達の気まずい空気を掻き消すかのようにチャイムが鳴り渡る。
悠は泣かなかった。
男の子だからといって泣かないとは限らない。
だけど悠は涙を見せなかった。
それは一種の強がりだったのかもしれない。
