もう会えない君。



声を掛けようか迷っていると、

「おい、悠?体育館に移動しねーの?」

――慣れた口調で隼が先に言葉を発した。


すると。
隼の言葉に伏せていた顔を上げて気怠そうに背伸びをして、

「なんだ隼か」

そう言って早瀬悠は軽く笑った。


…この人、笑うんだ。
さっきまでの素気ない態度とは大違い。


思わず凝視してしまっている私の方に早瀬悠の視線が向けられ、ふいに重なった。


「隼の知り合い?」
声を掛けられた事に驚き、頷く事しか出来なかった私に手を差しだす早瀬悠。


「今日から宜しく。鈴木凛さん?」
そう言って私の片方の手を軽く握り、笑みを浮かべると手を離して立ち上がり、教室を出て行った。


…なんで知ってるの……。
自己紹介もしてないのになんで?


「俺らも行こう?」
隼の問いに私は頭の中の疑問を掻き消し、隼と急いで体育館に向かった。