もう会えない君。



マンションに向かう途中にある駅前のベンチに腰を下ろした。


夕焼けが街を明るく染める。
先を急ぐ人達が私の目の前を通過していく。


夕立がアスファルトに叩き付き、明るさが反射して見える。


いつもは悠と隼が一緒なんだけど今日は二人とも用事があると言って先に帰ってしまったので珍しく一人で帰った…のはいいんだけど蒸し暑さに負けた。


快晴が続く夏は好きといえば好きだけど、この暑さは嫌いだ。


暑さで汗が滲み出る。
待ち行く人々は片手にハンカチを持ちながら歩いてる人達が多かった。


私は立ちあがり、残り僅かのマンションに向かった。



「あ、凛ちゃん!」
背後の声に足を止め、ゆっくりと振り向いた。
するとこちらに駆け寄る皐が目に入った。


――…トクンと胸が高鳴った。


皐は私の目の前まで来ると笑顔を見せた。


――…トクン。
再び胸が高鳴った。


なんだろう?この気持ち…。