もう会えない君。



悠はこれからは無視しないと言った。


約束通り、声を掛けられたら相槌は打つようになった。
質問をされたら手短に答えるようになった。
だけど悠はアドレスだけは絶対に教えなかった。


私でさえ悠のアドレスは知らないし、知ろうとも思わない。


別に知らないままでいい。
私のアドレス帳には二人の名前だけが登録されてる。
寂しい携帯でしょ?
でも別にアドレス帳が埋まればいいってもんじゃない。


携帯は単なる連絡手段に過ぎない。
話そうと思えば学校で話せるからいい。



ある日の休み時間。
一人の女の子が悠に笑顔で近寄って来た。


そして…――――

「悠くん、“悠”って呼んでいい?」

…――――呼び捨てにしていいかと聞いてきた。


悠は首を縦には振らなかった。