…え?
今、“凛”って言った?


目を瞬かせて立ち尽くす私に一歩一歩、歩み寄って来る隼。


隼は私の目の前で立ち止まると靴を履き替えて、

「帰ろう?」

と、優しく笑った。


さっきのは聞き間違いだったのかな?


そう思いながら、私は数歩遅れて隼の後ろを歩いた。


「なんか…面倒な事になってたみたいだけど大丈夫?」
数歩後ろを歩く私に歩幅を合わせてくれたのか、気付くと私は隼の隣に居た。


こくんと頷いたけれど隼はそれでも心配なのか、言葉を掛けてくる。


「気にしない方がいいよ?あんな奴の言う事なんて」
…気にしていないといえば嘘になるけど別に分かってる。
自分が可愛くない事くらい分かってる。


なのに人に言われるから嫌になる。
自分では分かり切っている事を人に言われるから苛立つ。


私はまたこくんと頷いた。