「ファミレスに行かない?」
二人にそう問い掛けると一瞬だけ顔を見合わせて…――――頷いた。


「実はさ、俺らも行こうと思ってたんだ」
悠の言葉に嬉しさを感じながらも三人で肩を並べて思い出いっぱいの高校に背を向けた。


一歩ずつ離れてゆく、通い慣れた高校。
隼と出会った大切な場所。
忘れたくない思い出が詰まった高校。
そんな高校とも今日で…お別れなんだね。


どうしても。
譲れない気持ちがありました。
どうしても。
離れたくない“想い”がありました。


あの頃の私達はまだ幼過ぎて。
何をするのにも億劫に思えて。
どんな小さなものでも、手放したくなくて。


失う事に怯えて。
夜を迎えるのが怖くて。


小さな願いでも。
小さな希望でも。
失う事が怖かった。


だけど…
こうして今生きてる事は奇跡なんだ、って思う。


隼や悠、皐と過ごした時間も
幼い頃の家族との大切な思い出も
私にとってはどんな小さな事でもかけがえのない宝物。


人を憎んでも
嫌っても、恨んでも何も生まれない。


憎しみからは何も生まれない。
誰かを苦しめる事で自分が救われるわけでもない。


だったら。
人を嫌うのをやめて、自分から壁を壊した方がずっといい。


そう教えてくれたのは。
たった一人の忘れられない君だよ。