<ガサ…――――ッ>
思わず立ててしまった音に二人の間で飛び交っていた会話が遮断された。
視線が私の方へと集中した…けど薄暗くて、よく見えない所為か、二人とも目を細めていた。
私は一歩…また一歩、近付いた。
そして街灯に照らされた頃には由香里さんの表情が変わっていた。
「り…凛っ!?お前、なんでここに!?」
驚く隼は私に近付いて私の肩に手を置いた。
「あ~ら、貴方から来てくれるなんて嬉しいわ」
不敵な笑みを零しながらも目は笑ってない由香里さん。
今、気付いたけど…この人、焦点が合ってないし、呂律が廻ってない。
隼は私を自分の後ろに隠すように私の手を引いた。
「ちょっと!私はそいつに用があるの!そこをどいてよ、隼」
「それは出来ない」
「………」
「なんで?そんなにそいつが好き?」
「そうだけど?」
「………」
「嘘よ。隼が好きなのはそいつじゃない。この私でしょう?」
「嘘じゃないし、俺はお前を好きじゃない」
「………」
「照れ隠しのつもり?隼ってば、昔から恥ずかしがり屋さんね♪」
「はあ?」
「………」
「ちょっとメスブタ!出てきなさいよ!!」
「そんな名前の奴なんて居ねーだろ」
「………っ」
怖さからなのか、手足が震え出した。
今の由香里さん…正常じゃない……。