あっ!


病院から近道で家に帰るにしろ、家から病院に近道で行くにしろ、通らなければならない“場所”がある。
それは…木々達で囲われている小さな公園。
夕方くらいまでなら、子供達で賑わっている場所なんだけど夜になると薄気味悪く、人気もない場所と化す。


やっと…見つけた。
公園の滑り台近くに隼は居た。


だけど一人じゃない。
隼だけじゃない…。


もう一人、見えないけど声が聞こえる。


「…――――ッ」

「――――…!?」


悲鳴に近い声を出す由香里さんの声が公園に虚しくこだました。
隼はそれに反論する事もないまま、黙り込んだままで…何も言い返さない。


一方的に由香里さんが話を進めているように見えた。


私は林の陰に身を潜めながら、二人の様子を窺った。
何を話しているのかまでは聞こえないから分からないけれど、街灯で照らされた由香里さんの表情は怒りに満ちている。


涙が出ているのか、由香里さんの頬からはキラキラとした滴が零れ落ちていた。


隼…
出ないんじゃなくて出られなかったんだ。


もう少しだけ近付こうと思ったけど、いつまでもここに潜んでいるわけにはいかない。


私は静かに二人の居る元へと向かった。
木々達の揺れる音がする。
その音が更に不気味さを醸し出しているかのようだ。