「なんなんだよ、あいつ」
壁に怒りを込めて強く蹴りを入れる悠。
隼は悠の怒りよりも私の事を心配してくれて、
「凛には手出しさせないから」
そう言って頭をくしゃっと優しく撫でた。
由香里さんに言われた言葉。
たった二つの文字。
その言葉が心に突き刺さった。
“死ね”
口パクで声に出さずに言われた一言。
恐らく、誰も気付いていないだろう。
鋭い視線と鋭い言葉は私の心に鋭い棘を刺した。
人間とは嫉妬深い生き物だけど…
あそこまで人を愛し、溺れた人間は見た事がない。
恐ろしいと思った。
誰かを愛する事は罪ですか?
誰かに愛される事は罪ですか?
答えが欲しいだけなのに見つからない。
この時、なんで気付かなかったんだろう?
タイムリミットは残り僅かだという事に…。
残された私達の時間は時が刻まれると共に儚く消えていたんだ。
