もう会えない君。



「何の事~?」
そう言って由香里さんはチラっと横目で眠ったままの皐に一瞬だけ視線を向けた。


「お前が皐をあんな目に遭わせたんだろ!?」

「さあ?」

「…っざけんな」

「早瀬悠。この病院を仕切ってる早瀬財閥の跡取り息子?」

「はあ?」

「パパに聞いたわ。早瀬財閥がバックに居たら面倒なんだけど」

「お前、頭狂ってんじゃね?丁度いい機会だし、入院でもしてろよ」

「ふーん。そうゆう事、言って良いと思う?」

「………」

「パパの友達に早瀬財閥よりも強い権力を持った人間が居るの」

「だから?」

「一握りでこの病院も潰せるって事よ」

「やれるもんならやってみな。その代わり、お前はここで入院しろ」

悠は由香里さんの脅しに余裕を見せながら答えた。
言葉を失ったのは他の誰でもない、由香里さんの方で…悔しそうに唇をキツく結んでた。


由香里さんの視線が私に向けられた。
声に出さずに口パクで一言だけ言葉を告げると由香里さんは背を向け、再び、カツカツとヒールの音を響かせながら去って行った。