もう会えない君。



「あ、ここだ」
立ち止まる悠の数歩後ろで私と隼も立ち止まった。


“集中治療室”と記されたプレート。
ガラス越しでしか、皐を見る事が出来なかった。
中に入りたいと言ってみたけど家族以外は入室禁止と言われた。


「皐…」
変わり果てた皐の姿を見た隼はその場に力なく、座り込んだ。


「ちょ、お前…大丈夫かよ?」
座り込む隼に悠が近付きながら問い掛けるけど隼は口を閉ざしたまま。
無理もないだろう。
朝、いつものように駅前で別れたはずの友人…隼からすれば同居人でもある皐がこんな姿になってるのだから。


機械類に囲まれてる皐は頭だけでなく、手足にも包帯をぐるぐる巻かれていた。
見てる側でも痛々しく思える。
何があって、こうなったのかは分からないけど何か…殺意に近いものがなければここまでは出来ないと思う程、怪我は酷かった。


座り込む隼を近くのソファに座らせた。
そして私は隼の手を握りながら聞いた。


「皐くんに何があったの?」
私の問いに隼は俯いてしまった。
だけど小さく溜息を吐いて話し始めてくれた。


「犯人は分かってるんだ」
…聞いた問いに対する答えではなかったけど。


「え?」
驚いたのは私だけではなく、悠も同じだった。


犯人は分かってる…それってどうゆう事?
隼は皐をこんな目に遭わせた犯人を知ってるの?