もう会えない君。



私達は皐の居る病院に駆け込んだ。


ナースステーションに行って「九条皐の病室を教えて下さい」と言うと一人の看護士さんが不思議そうな表情を浮かべた。


――「御家族の方ですか?」
私達に飛んで来た言葉は皐の病室ではなかった。


今そんな事、話してる場合じゃないのに…。


「友人ですけど」
そう答えたのは私ではなく、隣に居た悠だった。


「あっ…もしかして早瀬様の息子さんでいらっしゃいますか!?」
突然、一人の看護士さんが血相を変えた。
悠に向ける言葉の遣い方が凄く丁寧になってた。


「だったら何?」
冷たく言い放つ悠に看護士さんは紙に何かを書いて悠に手渡した。
それを当たり前のように受け取る悠。
何が書かれているかは分からないけど、そのまま歩き始めた悠。


なぜか、看護士さんは悠に頭を下げてる。
それも一人、二人ではない。
ナースステーションに居た人、全員が悠に頭を下げてた。


…悠って何者?


「えっと、集中治療室に居るって」
悠は手渡された紙を見ながら私達に言った。


多分、悠が手に持つ紙には皐の居る場所が書かれているんだと思う。