もう会えない君。



「おーい、隼?」
悠の声に携帯から視線をこちらに向ける隼は青褪めていた。


「どうか、したの?」
只事ではないと察した私が恐る恐る、隼に問い掛けると一呼吸置いて口を開いた。


「さ…」

「え?」

「皐が…」

「………」

「………」

隼の手から携帯が抜け、床に虚しく小さな音を立てて落ちた。


「おい、隼。皐が何なんだよ?」
黙っていられなくなった悠は隼に低い声で問い掛ける。


「ボコられた」

「え…?」

「は…?」

「皐がボコられた」

「………」

「………」

「今、病院に居るって…」

「病院!?」

「それくらい酷いのか!?」

「…意識不明の重体らしいんだ」

「嘘…なんかの冗談、でしょ?」

「………」

だけど誰も“冗談”とは言ってくれなかった。
どうして皐が殴られたのかは分からない。
詳しい状況も、何があったのかも分からない。