私が隼の元に駆け寄ると隼はストラップから視線を私に移した。


そして手を差し出すから私は重ねる。
当たり前のようで当たり前ではないのだけれど私達の中では“暗黙のルール”と化している。


雑貨屋さんを出てすぐにさっき買ったストラップを取り出した。


ピンク色のリボンが付いた白いくまちゃん。
色違いで水色のリボンが付いた白いくまちゃん。
この二つのストラップは隼が獲ってくれた白い大きなくまちゃんのぬいぐるみと何処と無く似ている。


「はいっ」
隼に水色のリボンが付いた白いくまちゃんストラップを手渡すと隼はきょとんとした表情で私を見つめていた。


「…お揃いとか嫌だった?」
今にも聞き返してきそうな感じだったから私は言葉を紡いだ。


そしたら隼は首を左右に振ってストラップを指で掴んで揺らした。


「全然!むしろ嬉しいよ。ありがと!」
優しく微笑む隼の顔を見て私も笑顔になった。


一緒にお揃いのストラップを携帯に着けた。
揺れ合う、互いの白いくまちゃんストラップ。


私達の思い出の品がまた一つ増えた事に喜びを噛み締める私はまだ分かっていなかった。


これは単なる“警告”に過ぎなかったという事に…――――。
神様が私達に与えたのは幸せなんかじゃなかった。



ねえ隼…?
私は今でも着けてるよ。


忘れたくないから。
隼と居た時間を、瞬間を…。


思い出が一つ増えるだけで私達の絆も深まってたね。



再スタートしたばかりの私達には越えられない壁があったんだ…。