もう会えない君。



「ちょっと、あんた話聞いてんの?別れたんでしょ?だったら二度と隼に…――――」

「やり直す事にしたから」
由香里さんの言葉を遮った隼は私を自分の後ろに隠すようにして由香里さんと向かい合った。


一瞬だったけど驚いた表情を見せた由香里さんは隼の言葉に何も言い返す事がなくなったのか、ただ隼に視線を向けてた。


なんで…
どうして…
そんな表情を浮かべながら。


「もういいだろ?これ以上、構うな」
隼は唖然としたままの由香里さんをその場に置き去りにして私の手を引き、歩き始めた。


怒ってる。
多分だけど隼は怒ってる。


だって一度も私と顔を合わせないもん。
歩くスピードも歩幅も由香里さんと会う前とは違う。


追い付くのがやっとだった。


「はや、隼っ!」
私の手を引いて少し早めに歩く、隼を呼び止めようと名前を呼ぶと隼はハッとして立ち止まってくれた。


そして私の方に振り返って申し訳なさそうに言った。


「ごめん。手、痛くない?早過ぎたよな…本当にごめん」


隼を責める気なんてなかった私は首を左右に振った。
だけど隼は何処かで自分を責めているように見えた。