もう会えない君。



私は隼と由香里さんの会話を黙って聞いてる事しか出来なくて…。


だけど、いつまでも黙ってる私が気に入らない由香里さんは盾先を私に変えた。


「あんた何様?」
低く冷たい声が私に落とされた。
駅前で初めて会った時の面影なんて今の由香里さんにはなかった。


「え…」
顔を上げると鋭い目付きで私を捉えている由香里さんが居た。


「隼の手を離して」
由香里さんは髪を掻き上げながらそう言った。
でも私は繋いだままの手を離そうとは思わなかった。


誓ったから。
この繋いだ手を二度と離さないって。


「…嫌」
小さい声で答えた。
震える声で返答した。


「は?もう一度言ってあげようか、隼の手を離して」
今にも殴られそうなくらい怒りに満ちてる由香里さんを目の前に足が竦んだ。
ガタガタと震える足に力を込めているから保つ事が出来ている状態だったけど…それでも離すつもりはなかった。


だから、

「嫌っ!」
聞こえるように先程より大きく言葉を発した。


それなのに…。


「あんたなんか隼に似合わないのよ!別れたんじゃなかったの?」
由香里さんは追い詰めるように近付いてくる。
後退りする事も出来ないまま、どうする事も出来ない私は何も言葉を返す事が出来なかった。