もう会えない君。



なんで…


「隼っ!」
怒声に似た声が響いた。
それは紛れもなく、由香里さんの声で私は硬直してしまった。


なんで…
こんな所に由香里さんが居るの?


立ち止まる私達に近付いてくるのは怒りに満ち溢れた由香里さんだった。


震える手を、握り締めたままの手を、隼は強く握ってくれた。
だけど…
“怖い”と思う気持ちは、“不安”と思う気持ちは消えなくて…。


「隼っ!!なんで私の電話に出ないで、こんな女と居るの!?」
由香里さんの鋭い視線が突き刺さる。
でも私は平気だって、自分に言い聞かせてた。


「由香里…」

「ねえ隼、彼女は私でしょ?そうよね?」

「俺はお前を好きじゃない」

「…えっ?何を言ってるの?」

「俺が本当に好きなのはお前じゃなくて凛だけだ」

「あの時の約束、忘れたの!?」

「忘れてない」

「だったら…――――」

「間違ってるって思ったんだ」

「何が!?」

「好きでもないのにお前と付き合って凛を傷付けるのは間違ってるって思った」

「………」