もう会えない君。



「行こう?」
差し出された隼の手に自分の手を重ね、悠達に背を向けた。


何処に行くのかは分からない。
でも、それでも…
隼の隣をこうして歩く事が出来る。
私は凄く幸せだって思えたんだ…。


数歩、歩き始めた時。
背後から「楽しんで来いよ~!」という悠の声が聞こえた。
振り返った時には遅くて悠と皐は反対方向に向かって歩き始めていた。


「俺さ、」

「ん~?」

「もう凛を手放したりしないから」

「……隼」

「由香里の言い成りになるのもやめる」

「………」

「だからさ、」

「うん?」

「こんな俺だけど信じて?」

「………」

「一生一緒に居る事が俺も目標で、夢なんだ」

「分かった。何があっても信じる」

「ありがと」


そう言って隼は優しく微笑んだ。
私の頭をいつものようにポンッと優しく撫でた。



ねえ隼…
約束、覚えてる?


私達が交わした約束は叶う事はなかったね。