もう会えない君。



「凛ちゃん…ごめん…っ…」
皐の声は掠れていた。
足音が遠ざかり、バタンと隣の部屋の扉が閉まる音がした。


涙が零れる。
携帯は鳴らない。
たったの三件しか登録してない携帯は鳴らない。


言いたくなかったよ…。
あんな事、絶対に言う日は来ないって思ってたのに。


神様は知ってたんでしょう?


こうなるって。
未来を予測してたんでしょ?


隼…。
ごめんね。
別れるなんて嫌だった。
でも、信じ切れない自分に苛立った。


出来る事なら他の方法を考えたかった。
話し合う事だって出来たはずなのに私は逃げたんだ。


皐は忠告してくれた。
なのに私が喫茶店から逃げ出したから…結果的に自分を苦しめる羽目になったんだ。


折角、教えてくれたのに。
戻っちゃ駄目だって言ってくれたのに。
私は皐の忠告を無視した…だから、こんな事になった。


もう少しだけ私の頭がよかったら…
もう少しだけ可愛く生まれていたら…
私は由香里さんが居た、隼の隣に居られたのかな?