気付いたら走ってた。
エレベーターに乗らず、階段を駆け上がってた。
隼の返事は聞いてない。
…というより聞きたくなかった。
私の後を追って来たのは隼じゃなかった。
追い掛けて来てくれたのは皐だった。
期待しちゃってたのかな?隼が追い掛けてくれるんじゃないかって。
そんな事、有り得ないのに…。
「凛ちゃん!!」
廊下中にこだまする皐の声を無視して私は部屋の扉を開けて勢いよく閉めた。
隼は…誰を想ってたの?
私と居る時に見せてくれた笑顔は誰に向けてたの?
優しく掛けてくれる言葉は誰に向けていた言葉だったの?
どんなに願っても、どんなに祈っても、君の一番になれないんだ。
私の中では君が一番なのに…。
こんなに好きで、こんなに愛おしくて、こんなに想ってるのに。
なんで由香里さんなの?
隼が好きなのは私じゃなくて幼馴染の由香里さんだったの?
目を閉じれば、手を繋ぐ二人の姿が浮かぶ。
笑顔を向ける隼…。
嬉しそうに微笑む由香里さん…。
あの日から…――――私達には越えられない壁があったのかもしれない。
