もう会えない君。



私は一口も飲まなかったオレンジジュースをそのまま残して鞄を手に喫茶店を出た。


マンションの方に向かって走った。
引き止められても私はマンションに向かった。


だけど…。


少し遅れて出てきたはずの皐はダッシュで私を追い掛けて来たようですぐに追い付かれた。
でも私は足を止めずにマンションへと向かおうとしたのに皐が私の腕を掴むから足を止めざるを得なかった。


「離してよ」

「今はまだ駄目だって!」

「何が駄目なのよ」

「………っ」

「言えないなら離してよ!」

腕を振り払おうとした時。
マンションの出入り口の扉が開いた音がした。


視線を向けた瞬間、後悔した。


見なきゃよかった。
見るんじゃなかった。


皐の言う通りにしてればよかった。


そうすれば、こんなにも心が張り裂けそうになる事はなかったのに…。


出入口から出て来たのは…――――由香里さんと手を繋ぐ、隼の姿だった。