もう会えない君。



「じゃあ、また明日」
私が笑顔で手を振ると悠も笑顔で手を振った。


悠に背を向け、マンションの方へと歩き出した。


高校生活はまだ始まったばかり。
これから始まる高校生活を楽しく過ごせたらいいな…なんて思っていたらマンションに辿り着いた。


エレベーターに乗り、三階のボタンを押した。


静かな室内で三階に着くのを待った。
悠と会話が弾んだ所為か、なぜか一人で居る事を寂しく思った。


軽快な音が鳴ると共にドアが開いた。


エレベーターを降りて足を進める。
302号室の前で足を止め、ポケットの中から鍵を取り出し、鍵穴に差し込んだ。


カチっと音を立てて鍵を開け、ドアノブに手を掛けた。


部屋の中に入ると薄暗い部屋が私を出迎えた。
カーテンで閉め切っている所為で薄暗く感じるのだろう。


誰も居ない部屋にただ一人。


“ただいま”と言っても“おかえり”という言葉が返って来る事はない。


大きく溜息を吐くと静寂しきった部屋に虚しく響いた。