もう会えない君。



意外な事に悠とも打ち解ける事が出来た。


教室で見た態度とは大違い。
無口だと思っていたけど話そうと思えば話せる。
それによく笑うし、たまに見せる笑顔がとても可愛い。


駅前に差し掛かった所で立ち止まる私。
数歩遅れて悠も立ち止まった。


私は駅前近くのマンションで一人暮らしを始めた。


両親が離婚をした時、私はどちらからも必要とされなかった。
むしろ邪魔扱いされ、養護施設に入れられた。


金銭面に関しては心配する必要がない。
理由は両親が毎月多額のお金を振り込んでくれているから。


それが自分達に出来る唯一の罪滅ぼしだとでも思っているのだろう。



「あれ、凛って何処住んでんの?」
悠の言葉に我に返った私は悠に視線を向けた。


「えっと…あそこ」
私はマンションの方に指を指し示した。
私の指が指し示す方へと視線を向ける悠。


「あのマンションって……」
独り言を呟く悠を私は首を傾げて見てただけで聞き返したりはしなかった。