「あの、早瀬くん?」
「えっと…それで新人の俳優が大根役者だなって」
「…早瀬くん」
「あ!喉乾いた?飲み物、買って来ようか!?」
「………」
明らかに必死だ。
何としてでも会話が途切れないようにと必死だ。
「自販機は確か、ここから結構遠いかな…コンビニ寄る?」
喉が渇いたんじゃないと言いたいのに言う隙が見つからない。
帰り際に見た悠は女の子にこんな態度してなかったのに。
おかしなギャップを見つけてしまい、私は思わず笑みを零した。
私が笑うとさっきまで必死になって話していた悠が突然、喋るのをやめた。
そして私の事を不思議そうな目で見つめていた。
「…早瀬くん、面白い」
私が振り絞るようにして出した声は明らかに笑い混じりだった。
馬鹿にしたんじゃない。
ただギャップの差が可愛く思えただけ。
未だに不思議そうな目で私を見つめる悠に、
「私、喉乾いてない」
とだけ告げると少しだけ驚いた表情を浮かべた。
「はや…――――」
「“悠”でいいよ」
「じゃあ悠くん、」
「何?」
「今度は私が話題出す」
「…そうしてくれると助かるかも」
悠はそう言って笑った。
