私の少し前を歩く隼の後ろ姿…
今にもその背中に飛び込んで後ろから抱き締めたい。
だけど季節は夏。
暑さが半端じゃない季節。
抱き着こうものなら暑苦しいと思わせるのと一緒だ。
ましてや灼熱の太陽が熱を注いでいる、この空の下で抱き着くなんて恥ずかしさよりも厚さが圧倒的に勝ってしまうだろう。
ごめんね…。
背中にポツリと言葉をぶつけた。
すると突然、隼が足を止めて振り向いた。
「何、暗い顔してんの?凛は笑顔が可愛いんだから笑えよ」
私が背中に言葉をぶつけた事を知ってるかのように…隼は私に笑顔を見せた。
嘘でもいい。
思ってなくていい。
あの人に可愛いなんて思われてなくて構わない。
私は今、目の前に居る隼が言ってくれた言葉の方が嬉しいから。
由香里さんの言った偽りの言葉よりも本音の言葉の方が嬉しい。
だから私は君に笑顔を向けるの。
大好きな君だから…そして離れないように手を繋ぐの。
抱き締める事は出来なくても一歩一歩、進んでいけばいい。
君が笑うから私は幸せな気持ちになれる。
君が隣に居てくれるから私は笑顔になれる。
私と隼は待ち合わせ場所に居る悠の元へと急ぎ足で向かった。
