もう会えない君。



「何?」

「一緒に帰らない?」

「……えっ?」

「嫌ならいいんだけど」

「なんで私?」

「駄目だった?」

「駄目じゃないけど…」

「けど?」

「ただ驚いただけ」

「驚く事でもないだろ」

そう言って悠は笑った。
隼にも見せていた笑みを浮かべていた。


――私は悠と昇降口を出た。


朝、来た道を戻る。
隼と違って話題を振らない悠。
二人の足音だけがやけに響いて聞こえる。


なんで悠は私と帰ろうとしたんだろう?
あんなに女の子達に囲まれていたはずなのに…どうして私だったんだろう?


「…凛って彼氏居んの?」
いきなり呼び捨てで呼ばれた事でトクンと胸が高鳴った。
だって男の子に名前で呼ばれた事が今までなかったから。


「居ない」
素気なかったかな?
話題を振られたのに短すぎた返答に後悔した。