もう会えない君。



「教室、行って報告会だな!」
そう言って隼が私に手を差し出す。


私は隼の大きな手に自分の手を重ねた。
繋がれた手からは隼の温もりが伝わってきた。


階段を下りる時も隼は私の歩幅に合わせてくれた。
目が合うたびにお互い、照れてそっぽを向いたりもした。


教室前の廊下では戯れる生徒で賑わっていた。


「ゆーう!」
ふと見えた悠の姿に声を掛けたのは隼。


手はまだ繋がれたまま。
隼の温もりだけが伝わる。


悠は私と隼に気付くと、いつものように明るい笑顔をくれた。


一歩一歩、近付く私達に悠の目が丸くなる。
悠はある一点だけに注目して私と隼の顔を交互に見つめた。


「え…何?お前等、デキちゃったのか?」
改めて言葉にされるとなんとなく恥ずかしい。
だけど私は照れ臭そうに頷いた。もちろん隼も。


「うっわ…まじかよ!?おめでとう!!」
悠は喜んでくれた。
私と隼の交際を祝福してくれた。


それが凄く嬉しかった。
悠が向けてくれる笑顔はいつもより輝いて見えた。