もう会えない君。



<バタンッ>


扉が閉まる音がした。
勢いよく閉まる扉の音が…――――そして聞こえた。


「凛っ!!」
…――――私の名前を呼ぶ君の声が。


顔を上げる事なんて出来ない。
今、顔を上げてしまえば貴方は謝るだろうから。


笑わなきゃ…。
隼が心配するでしょう?


ほら、馬鹿凛っ!
顔を上げて隼に笑って!
大丈夫だよ、平気だよ、って笑って!


涙なんか拭って隼を安心させなきゃ駄目じゃん…。


なんで止まらないの?
止まってよ…後でいくらでも流すから…今だけでいいから止まってよ……。


隼が私の目の前で立ち止まったのが分かったのは足音がぴたりと止んだから。


顔を上げなくても分かる。
隼は…私の目の前に居る。


視線を感じる。
気配を近くに感じる。


なんで…
神様のいじわる。