「ねえ早瀬くん!メアド教えて?」
一人の女の子が身を乗り出して聞くと悠は面倒臭そうに溜息を吐いた。
あれ?
さっきは普通に話してくれたのに他の子には話さないの?
疑問に思っていると悠が口を開いた。
「ごめん。無理」
冷たく言い放たれた言葉に女の子達が「なんで?」と問い質す。
やっぱり会って間もない人とアドレスを交換するのは嫌なのかな?
そんな事を思いながら席を立ち、私は入口へと向かった。
向かう途中に聞こえた悠の言葉は驚く言葉だった…。
――「俺、特定の彼女は作らないから」
その言葉がなぜか意外だった。
悠と隼なら、競い合えるくらいの彼女が出来ると思ったから。
もしかして悠って…女嫌い?
なんて思いながら立ち止まる事もないまま、昇降口まで向かった。
一息吐いてローファーに履き直した。
上履きを仕舞おうとした時、丁度、悠が昇降口に来て目が合った。
もう来たんだ。
あんなに女の子からアドレスを聞かれてたのに。
どうやって掻き分けて来たんだろう?
「あのさ、」
口を開いたのは私…――――ではなく、悠の方だった。
