「ずっと見てるみたいだったから」
そう言うと彼も頬杖を突いて私から空に視線を移した。
「貴方も好きなの?空」
質問に答える事もせず、逆に質問した私に文句一つ言わずに彼は「うん」と短めに言葉を返した。
…早瀬悠。
この人、初めは無愛想な人に見えたけど話そうと思えば話せる人なんだ。
私の中で早瀬悠という人間の印象が少しだけ変わった瞬間だった。
「ねえ、」
聞きたい事があった私は空を眺める彼に話し掛けた。
無視されるかと思ったけど彼は視線を私に移し、「ん?」と首を傾げた。
「なんで私の名前知ってるの?」
…そう。
先程、彼から名前を呼ばれた事が疑問に残っていた。
「だって書いてあったから」
視線を黒板の方に向ける悠の視線を追い掛けると席順が掲載されてるプリントが目に入った。
そんな簡単な事にも気付かなかったんだと思い、聞いた事に対して恥ずかしくなった。
「…なるほど」
頬が熱くなる。
おまけに心臓が騒がしい。
聞くんじゃなかったなんて後悔しても遅いわけで…
そのまま何も話す事はなかった。
「じゃあ明日、忘れ物しないように!!」
担任は一礼して教室を出て行った。
どうやら帰りのホームルームは終了したらしい。
帰ろうと鞄を持ち、立ち上がろうとした時。
ふと視界に入ったのが女の子で囲まれた悠の席と隼の席。
早くも二人を目当てに別のクラスから来る生徒達。
