もう会えない君。



人の話を聞くのは苦手じゃない。
だけど私は担任の言葉を聞こうとはしなかった。


ただ空に集中していた。
空を見る事だけに神経を集中させていた。


話を聞くより空を眺めている方が良いから。


空を見てると心が和む。
悩んでいた事がちっぽけな事だと思える。
不安な時は一瞬だけでもその不安を取り除いてくれる。


だから私は空が好きだ。
見てるだけで安心出来るから。


「……なあ、」
頬杖しながら空を眺めてると担任の声とは違う声が聞こえた。


視線を空から声のする方へと移すと早瀬悠が私に視線を向けていた。


少し驚いたけど私は平然を装いながら、「何?」と首を傾げた。


「空好きなの?」
意外な質問に私は「え?」と聞き返してしまった。


―好きなの?
そう聞かれたら、何も好きだと答えればいいだけなのに。


突然の質問だった事と声を掛けてきたのが早瀬悠だった事に驚いた私は答える事が出来ずに聞き返してしまった。